Portative Ogan
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の楽器は、11〜13世紀くらいに愛用されました。このような楽器が、当時幾ら位の金額で購入できたので しょうね。相当に高価だったことでしょう。 片手でふいごを動かしながら弾くタイプのオルガンです。当時の絵画には数多くみられます。参考資料は H.F.MILNE著 [HOW TO BUILD A SMALL TWO-MANUAL CHAMBER PIPE ORGAN]と音楽雑誌「アントレ」に連載された、田中司氏の『ポルタティーフ・オルガンを作ろう』という記事です。他、パックス・アーレン社「オルガニスト・マニュアル」、「オルガンのすべて」など。

 

基本図面はこんな感じ・・・。外装は時代的に言って、当然中世、ゴシック調の彫刻を施すつもりです。
使用材 は、なら材です。なら材特有の虎斑(しましまの虎の柄)が、ヨーロッパ中世の雰囲気を醸し出すことでしょう・・・と、捕らぬ狸のなんとやらで、物事をいいようにとらえています。

イメージ

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このタイプの楽器は、絵にも御座いますように15世紀くらいの小型オルガンです。このふいご式の送風システムは、この当時の教会の大型オルガンにも長い間使われて、ふいご職人と呼ばれる専門職が存在していました。水車を利用した、水力式ふいごもあったようですが、近くに川が流れていることが大前提なので、地域的に限定されてしまいます。やはり、ふいご職人がとても重要になってきます。ところが、このふいご職人がくせ者で、何しろ彼らが居ないことには、練習も、ミサも行えないわけですし、演奏中に、テュッティのところで沢山空気が必要なときに、音が出なかったら、とんでもないことになってしまいます。全体の曲の流れも把握していなくてはいけませんでしたし。








大型の楽器になると、
パイプの系列、音域で、数人で分担してふいごを踏んでいました。指揮系統がうまくいかないと演奏もままならないと言うわけです。
想像するに、彼らは結構ワガママだったかも・・・
案外、オルガン弾きの条件は、「ふいご職人に一杯おごったり、小銭を渡す事が上手なこと」だったかもしれませんね。

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(この図面はJWW-CADで描き、JPGに変換したものです)

5種類の木製パイプを試験的に作ります。
1.Open Diapason
2.Stopped Diapason
3.Lieblich Gedackt
4.Diapason Stopped Bass
5.Wald またはClaribel Flute
木製パイプの場合、断面形状が正方形ではなく、幅より奥行きが大きいです。H.F.MILNEの参考書によると、管長、幅、奥行きを具現化するスケール(計算式というより、単純な三角法)が、それぞれのパイプの種類で違ってきます。閉管の方が、開管に比べて幅、奥行きの比率が大きくなります。


鳴り具合、音色等は、パイプ下部の、Kern(核)/Blockと、取り外し可能の
Under Lip(下唇)/Cap(キャップ)の内側の加工に依るところ’大’です。木の材質も大事ですが....
(P.S)参考資料自体、英語とドイツ語がごっちゃになっています。もう少し用語を覚えてきたら、
統一していきたいと思います。でも...それぞれに該当する単語が無かったりするので、その時はしょうがないですね・・・
(P.S.)
英語とドイツ語がごっちゃ...理由が判りました。歴史的にヨーロッパ各国で独自の工夫と改良で進化してきたので、やはりその国の固有の名称が沢山あることが、下記のサイトで解りました。
【Encyclopedia of Organ Stops

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(この図はJWWファイルをDXFで保存し、イラストレーターに読み込み、さらにJPGで保存しました。
前の図よりキレイです)色々調べている内に、木管について少しずつ解ってきました。木管の内部構造についても、種類の多さに驚いています。

内部のブロック、キャップのウインドウェイの加工についてもちょっと光が見えてきた感じです。以下、解ってきた事のメモです。基本原理は上図のリコーダーと同じです。

★上唇の位置(リコーダーではラビーム)
上げると風は内部に多く入る、下げると風は外部に多く出る
★上唇の切り口の高さは、一般的には内径のと同じ
★切り口の高さは幅の1/3以下

切り口が高すぎると耳障りになる(ノイズが発生)
★もっと小さいスケールの場合、ドイツタイプのブロックを使用し、歌口をより高くする(通常幅の2/3以上の高さ)
★Diapason系の場合
切り口の高さは幅の1/4?1/3
★歌口の高さ
広く高い歌口は丸い力強い音になる
狭く低い歌口は弱く繊細な音になる
低い歌口には広いウインドウェイを作る
高い歌口には狭いウインドウェイを作る
★ブロックの刻み目(ウインドウェイの面);ドイツタイプに多い
目の粗い深い刻み目;豊かな丸い音になる
極めて細かく接近した刻み目;小さい鋭い音になる
★Chiffing(通常正しい音が出る前、または発音中にヤスリを掛けたようなノイズ)の原因;
狭すぎる刻み目
ゆるんだブロック
不正確な間隔のリップの縁とブロック
ウインドウェイに入ったゴミ、砂など
★Windiness(風の吹きすさみ...意味が判りません、風がピューピュー吹く感じかしら)の原因
ウインドウェイが広すぎる
刻み目が深すぎる
歌口が高すぎる
上唇が薄すぎるか、鋭すぎる
上唇に空気が直進していない
この場合の診断法
(a)歌口を手で覆ってみて、音が改善されれば、風のながれがLipの外側に走っている
改善方法;キャップを僅かに上げてみる。
(b)歌口を手で覆ってみて,むしろ悪化する場合
改善方法;風のながれがリップの内側に直進しているので、上唇を低くするか、ブロックを上げる

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5種類の木管タイプの試作です。
1.Open Diapason
2.Stopped Diapason
3.Lieblich Gedackt
4.Diapason Stopped Bass
5.Wald またはClaribel Flute











キャップ(下唇)は取り外し可能で、調音の際、音を聞きながら調整します。
こんな具合に削って いきます。

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基本図面ができました。ふいごの部分はまだ考えていません。パイプをどのタイプにするかまだ決めていませんが前回の記事の試作の5本を検討して、更にテストをして見ようと思っています。

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Open Diapason TennorC のスケール(EXCEL)  2½X2¾での木管の寸法です
ここで言う2½X2¾というのは、H.F.MILNE著「HOW TO BUILD A SMALL TWO-MANUAL CHANBER PIPE ORGAN」パイプの設計での、管内寸の幅と奥行きの比率です。
これに基づいて求めた管長と、一般的な開管振動の計算式から開口端補正した寸法は、殆ど差がありませんでした。最終的な整音の段階で、実際に音を出しながら長さを少しづつ切り詰めて調整するため10%ほど長めに作るので、この段階での管長の数値はあくまで目安です。

音名
周波数(Hz)
幅(内寸)mm
奥行き(内寸)mm
管の長さ(歌口からの寸法)mm
c2
522.87
21.6
23.3
310
g2
783.42
17.0
18.7
205
c3
1045.73
14.1
15.5
152
g3
1566.83
12.0
13.3
100
c4
2091.47
10.6
11.6
74
d4
2347.59
10.3
11.3
65


この寸法に基づいて a2のパイプを二種類、OpenDiapasonとClarabellaを作り最終的にどちらを採用するかを決めます。


2Pipes

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OpenDiapason(左)とClarabella(右)の2本のa2管を作りました。
(左のリコーダーはYAMAHAのソプラノ管です)

キャップをした図です

このクロームメッキの+頭の木ねじがカッコ悪いです。なんとか考えなくちゃ。
チェンバロのパーツ屋さんのMarc Vogel(独)には、木ね じ類も数多くそろえています。
・・・そうそう、いよいよどっちを採用するか決めました。左のOpen Diapasonでいくことにします。いろいろやってみた割には定石通りになってしまいました。音に関しては若干こちらの方が鳴りがいいし(ここで判断するには早計すぎますが)音色も好きかな?・・・という程度です。というより、全く未知の世界のことですし、わずか数本試作しただけで結果を出すには、あまりに不遜すぎます。なにしろ、このステージをクリアしないと次ぎに行けません。
MILNEの教科書通り、Open Diapasonを採用する方が今後とも楽だし。ということで、次に進むことにします。

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いよいよ OpenDiapason木管を作ります。最初に管のブロック(核/kern)の加工です 。

前述の図面の通り、真鍮パイプ(8φと6φ)の穴加工してから、切り込みを入れ、鑿などで面取りします。切り込みの加工は、丸鋸昇降盤で行うのですが上の写真のような高音部の部10mmx11mmx50mm程度の小さいものなのでかなり怖いです。

それぞれ、こんな感じになります。当然大きい方が加工は楽です。

管の側板とブロックを順に並べたところです。これから順に接着して行きます。

両側にあて木を当てて、クランプで圧着します。接着材が硬化したら、管の裏板を接着するため、鉋で目違いを払っておきます。

そして、プレーナーを通した厚板を台にして接着します。

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OpenDiapason木管のリップを加工します


のみで斜めの部分を削ります。 木工ヤスリで面を整えます。

こんな感じです。 前板がずれないように、両側に当て木をはさんでクランプで圧着します。

接着剤が硬化したら、両側を鉋で整えます。定規をあて、直角度(カネ)をみながら削ります。
それぞれ、長さを図面より少し長めにして切りそろえます。いよいよ、木管の要のキャップの加工です。

こんな風に加工して行きます。 まあ、こんな感じかな!

ウィンドウェイ(風路)の加工です。鑿でウィンドウェイの両側の切り立つ部分を正確に切り、僅かにすきます。この木工ヤスリは、平面が出しやすいので重宝なのですが、幅18mmのサイズが一種類しかありません。ですから使えたのは、低音部の3本だけ。あとは、鑿と精密ヤスリです。c2〜e2管は、キャップを手で押さえ、管に直接口を当てて音を出してみました。うん、よしよし、鳴るぞ〜〜。試作で数本作ったときより良好です。このタイプの管は、ブロックをいじらずに、キャップのウィンドウェイで調整、調音していくので、何度でもやり直しができます。

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木管のキャップの加工が少し進みました。c2からg3まで来ました。もうすぐ木管が立てられます(?)

木管を立てるボードの構造です。このボードも初めての経験なので、再度構造の確認の意味で
アイソメ(アイソメトリック)を描きました。

ボードA,B,Cを別々に加工してから、3枚をプレスします。それぞれのパイプの風路が確保される様に考慮します。このシステムが既に11世紀頃に確率されていた訳です。すごいな〜〜


(画像クリックで拡大)

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【ポルタティーフ・オルガンのウィンド・チェスト(風箱)】


パレットを押さえるスプリングです。ピアノ線(φ=1.2mm)をボルトを芯にして一回転させます。 こんな形状です。下に写っているのがパレットです。

これだけ作ると、もう指が痛いです。一回転させるのは(φ=1.2mm)が限界かも。

 

【Page13】


風箱(まだ仮組ですが)の内部に、パレットとスプリングを取り付けてみました。 なんせ、初体験なので、五里霧中(表現が適切じゃないかも)の状態での作業です。 ちょっとだけ先が見えてきました。
スプリングをいくつか取り付けてみました。

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鍵盤部分ができました。 ナチュラル・キーはつげ材、シャープ・キーは黒檀です。 木管は写真を撮るためにとりあえず立ててみました。

 

【Page15】

 

ポルタティーフ・オルガンのケースのデザインが決まりました。
ゴシックパターンのお手本にしたのは Sigrid Hinz著【Innenraum und Mobel】の中の
Kleine FrontstollentruheNiedersachsen, 1292 Kloster です (ほんとはMobelの"o"はウムラウトです)

正面の文字はラテン語です
「山下太郎のラテン語入門」http://www.kitashirakawa.jp/taro/indexj.htmlを

参考にさせていただきました。
【Ars longa vita brevis.】
「技術は長く、人生は短い」 英語にちょっと似てますね。
Ars;Art
longa;long

【Page16】

 

応かたちは出来ました。 ピッチとテンペラメントが決まっていません。 フイゴに使った皮は、手持ちの椅子張り用の厚い牛革なので、 2重に折り返した所が、すんごい不格好です。(いづれ交換します) エア漏れはどうにか解決しました。 パイプは先端を塞いで閉管で鳴らしても、けっこう鳴ってくれるので、ゲダクトにしようかとも思っています。
そうすれば、テンペラメントも変えられますので・・・
単式ふいごは、リコーダーの息継ぎと同じ感触ですね。
ダヴィンチの複式ふいごもテストしてみようと思っています。

 

【Page17】

2ヶ月以上放置していましたが、やっと再開です。


ポルタティーフ・オルガンのケースの側面のゴシック・パターンの彫刻です。 CADで原寸図面を描き、プリントアウトし、これをスプレー糊で、位置がずれないよう、正確に貼り付けます。 そして、こんな風に彫っていきます。

 

【Page18】

 

今日は、イトーシンミュージック(http://www.itoshin.co.jp/)で、MusicWire、つまりはピアノ用の弦を買ってきました。楽器関係者に「ピアノ線」という言葉を使うと叱られます。「ピアノ線じゃないよ、ミュージックワイヤだよ」と。 ピアノ線というのは、工業用の針金であって、楽器に使うものではないからです。 他に、楽器用のフェルト、クロス、センターピンなど買いました。 さて、ピアノを作る訳ではないのに、なぜミュージックワイヤを買ったかというと、ポルタティーフ・オルガンのパレット部分に使うスプリングを自作するためです。
以前自作したスプリングは、ホームセンターで買った「ピアノ線」φ=1.15程度だったのですが、ちょっと腰がなくて、前回の作業(2ヶ月ほど前)からだいぶ時間がたっているので、バネが弱くなっていました。 そこで、今日買ってきた、#22φ1.225mm(suzuki、国産)と#25φ1.4mm(roslou、独)の二種類を試してみて、良さそうなものを使うつもりです。

作り直した、パレット用のスプリングです

さて、いよいよパイプの整音に入ります。管の長さは計算値より10%ほど長めに作っています。
実際は何Hzのパイプに仕上がっているのか一本ずつ計測(右図)します。 私が持っているKorgのチューニングメーターは測定値が数値では表示されないので、フリーソフトで使えそうなものを捜したら2つ見つかりました。

「SoftTuner」  http://www.forest.impress.co.jp/article/2006/07/25/softtuner.html
「(尺八)運指チューナー」v2.88  http://www.forest.impress.co.jp/article/2006/11/14/unshituner.html
どちらも12分に使えます。各種テンペラメントも用意されていて、単体チューナーと遜色がないほどです

【Page19】

最後の調整の段階です。 ウィンド・チェスト(風箱)の中のパレットの外すと、スティッヒャー(突き下げ棒)が、コロンとウィンド・チェストの中に落っこちてしまいます。(イライラ・・・・、ムカ〜〜)
順番としては、鍵盤押さえを外し、調整するキーのスティッヒャーを抜いてパレットののスプリングを外し・・・ と結構面倒です。ついつい手順を踏まずに行うと、スティッヒャーが落ちてしまいます。

そこで考えました、スティッヒャーにつばが付いていれば落ちないな、と。 スティッヒャーは、3mmの真鍮棒なので、はじめは、先端にねじを切って、3mmナットを嵌めようと思いましたが、一本づつ旋盤にくわえて、ダイスでをかけるのは手間です。 そこで、4mmナットをバイスにはさんで、スティッヒャーに咬ませれば簡単ということで、こんな風にしました。

【Page20】

 

最後の調整の段階です。

それぞれのパイプの「鳴り」がなかなか揃いません。良く鳴るパイプと、ちょっと鳴りにくいパイプのキャップをはずして比べてみます。ちょっと見た目には殆ど変わらないのですが、やっぱり歴然と差が出てきます。隣同士のパイプは、サイズが殆ど同じなので、「良い」方のキャップを「良くない」方の本体に付けてみて、改善されれば、キャップを調整します。改善が見られないときは、ブロックおよび、歌口のエッジの調整と言うことになります。

何しろ初めて経験する「困難な壁」ですので、やたらと時間ばかりかかります。パイプを口でくわえてならすのと、ウィンドチェスト(風箱)に取り付けて鳴らしたのとではまったく違ってきます。口にくわえて鳴らすと、リコーダーと同じ感覚で、ついつい「鳴る」ように吹いてしまうので実際の「鳴り」とは違ってきます。

ですから、キャップの、ウィンドウェイ(風路)をほんの僅か削って(擦って)は、キャップを組み立て、ウィンドチェストに取り付けては鳴らし、そしてまた外しては解体の繰り返しです。

 

ピッチの調整です。

この時期、日によって寒暖の差が激しいので、気温が低い日はピッチ調製はするモノではないと自戒しました。何しろ管自体が短いのでで、気温の影響がはっきりと出てきます。写真は、パイプの開口部に臨時でくっつけた木片です。気温の低い日に長さを決めてしまった分が、後日、暖かい日には、ピッチが高くなっているので、この木片で僅かにピッチを下げてやります。なんともカッコ悪いです。これを何とかきれいに処理しないと・・・・・・

Page21】

<<パイプの調製に四苦八苦です>>
今日、たまたま、整音してるところに、チェンバロ製作のS氏が立ち寄りました。 オルガンは、ポジティブなどでも、特に2Feet、4Feetは、気温に敏感でステージのお客さんの入り具合での温度変化にも反応してしまい、とても大変な楽器だ、と言ってました。 (チェンバロとポジティーフを一緒に使う演奏会では、もう、半分成り行きで、あきらめるしかないとのこと。 気温が上がると、チェンバロはピッチが下がり、オルガンと管楽器は上がってしまいます。 全音域が均等に動いてくれれば良いのですが、チェンバロの場合、真鍮弦、燐青銅、アイアン(鉄)と、材質でピッチの動き方が違いますし、オルガンの場合、木管と金属管では、勿論違ってきます。) そうなんです、確かに、気温が僅か数℃変わると、さっき合わせたオクターブが、もう取れなくなってきます。 そもそも、この工房の作業室を、終日(仮に)摂氏20℃に保って調製するのは困難です、というより不可能です。
これでは、いつまで経ってもキリがつきません。パイプを切ったり、継ぎ足したりを繰り返すようでは、
埒があきません。 そこで、急遽、パイプをゲダクト(閉管)にしようと思い始めました。ゲダクトなら、
開口部に栓を取り付けて、これを移動することによって調律するので、各テンペラメントに設定できます。 ただし、管長がほぼ決まってしまったので、栓を付ける分、実効長が短くなるので、
392Hzのティーフ・カマートンは断念です。 ピッチは440Hzで、開管のオクターブ下になります。
もともと、オープン・ディアパーソンの前提での設計なので、閉管にすると鳴りにくいパイプも出てくると思いますので、再度調製しなくてはいけないでしょう。
【教訓】
開管のポルタティーフ・オルガンは、音域がせいぜい1オクターブ半が手頃かもしれません。そうすれば、ウインド・チェスト内部の風路のレイアウトも余裕がでて、風路の断面積もたっぷりとれ、風量が十分に確保できて、音量もだせるでしょう。

【Page22】

 

前回、室温の変化で、調律もままならないと書きましたが、実際どの程度影響を受けるのか、簡単な基礎物理の「気柱の振動」というのを調べて見ました。 20℃で440.0hzの設定です。
温度    振動数
10℃   432.4hz
15℃   436.2hz
20℃   440.0hz
25℃   443.7hz
30℃   447.4hz
35℃   451.1hz
となります。これでは、空調無しで自然任せの環境では、調音する意味がまったくないことが判ります。
この数値がいかに凄まじいかは、アンサンブルやオケで音あわせした方なら十二分に判ると思います。
いやはや・・・です。 やっぱりGedackt(閉管)に変更してして正解だったと思います。

 

【Page23】

 

またまた変更を余儀なくされました。
閉管の加工を始めたわけですが、元々開管の設計のモノを、閉管で鳴らすのは相当無理なことが分かってきました。 更に、閉管のボイシングが、開管に比べると、より一層微妙だと言うことです。 やっぱり、パイプ・スケール(パイプの幅と奥行きの比)が根本的に違います。 この楽器の設計は、Open Diapason(開管)のスケールで、1:1.1です。
一方、Lieblich Gedackt(閉管)のスケールは、1:1.44です。 相当な開きがあります。 そこで、意を決して、最初の予定通り開管で決定ということで、細かい温度と周波数の対応表を作りました。
ピッチは当初の、ティーフカマートーンといわれる392Hzのミーントーンです。 昨日は、午前10時くらいから、気温がず〜っと15℃でしたので 下記の対応表に従って調製を始めました。
------------------------------------------------
室温  周波数
10℃ 385.3 Hz
11  385.9
12  386.6
13  387.3
14  388.0
15  388.6
16  389.3
17  390.0
18  390.7
19  391.3
20  392.0
21  392.7
---------------------
昨日は午後になっても18℃程でしたから、比較的楽でした。 今現在、残り2本の調製が済めば、とりあえず終了です。

ポルタティーフ・オルガンは、一応使える状態になりました。 まだまだ微調整は必要ですが、どうにか一段落です。 ポルタティーフ・オルガンそのもの構造的欠点も見えてきました。 フイゴの押し具合で、音程が大きく変わります。また、フイゴをいっぱいに引き出して押す場合と中程で押す場合も、フイゴ内の容積が変わるので音程も変わってきます。
最大に引き出すと、容積が最大になり、押す力もそれなりに大きくしなくてはいけないんです。ところが、楽器の支点のの関係で、この位置で強く押すと、楽器が転倒してしまいます。 一番押しやすくて安定してるのは、60度ほどでしょうか。 どうやら、ポルタティーフ・オルガンは、一にもふいご、二にもフイゴのようです。 更にボイシングも詰めて行って、まあまあの状態になったら、塗装して、MP3録音してご披露させていただこうと思っています。 写真も捕らなくちゃ・・・

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ポルタティーフ・オルガンの塗装が済みました。
ナラ材白木地のままだったので、けっこう汚れが目立ってきたので、このような着色を施しました。
パイプは全くの未塗装です。

 

この楽器を加えて、一人で多重録音をしようと思っています。
曲は中世もの、例えば「聖母マリアのカンティガ集」(Cantigas de Santa Maria)とか、モンセラートの朱い本(カタルーニャ語:Llibre Vermell de Montserratは、中世西洋の歌曲集)などを考えています。

正面の文字はラテン語です 「山下太郎のラテン語入門」http://www.kitashirakawa.jp/taro/indexj.htmlを参考にさせていただきました。
【Ars longa vita brevis.】 「技術は長く、人生は短い」
英語にちょっと似てますね。
Ars;Art
longa;lon

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