Sumerian-Lyre
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古代シュメール人の撥弦楽器

 

以前より懸案の古代シュメールのライアを、より使いやすく、弾きやすくという趣旨で、新たに設計して見ました。
大英博物館に展示されているレプリカは高さ1,200mm程度ですが、これだけの大きさだと持ち歩きが大変なので、今回の設計は高さ900mm程度です。
糸巻きは、ペグ方式を採用です。
三次元CGを起こして、4枚の画像を作りました。
4枚目が構造図です。




 

古代メソポタミアのリラ(ライア)#1

お預かりしている、古代メソポタミアのライアの復元品の最終調整しています。
一番の問題は、弦のチューニングです。なにしろ紀元前2500年前の発掘品なので、当然原型を留めていない状態なので、弦をどのように腕木(ネック)に留めたのか分かっていないようです。可能性としてはアフリカの民族楽器に見られるようなバーをネックに直に縛っての「巻き上げ方式」と、状の丸棒をネックに縛って、ペグの役割をさせる「ペグ方式」の二種類です。
中世時代の初期ハープのように、ネックにペグを差し込んで回す方式の、ネックに穴を開けた痕跡はないようです。この画像は、大英博物館所蔵の楽器ですが、お預かりしている楽器も、ほぼこれと同じです。

この画像では弦は「巻き上げ方式」を採用しています。一方、当時のこの楽器が描かれている図が残っていますが、これはあきらかに「ペグ方式」と思います。


今工房に置いてあるお預かり品は、巻き上げ方式」で弦を張っていますが、チューニングは実に不安定で扱いにくいです。そして試しの「ペグ方式」です

古代メソポタミアのリラ(ライア)#3

新設計「シュメリアン・ライア Sumerian Lyre」と名前を決めました。古代メソポタミアのシュメール人のライアという意味づけです。
各部材のテンプレート(型板)を作り、昨日製材した松の古材から、それぞれパーツを作って、仮組みしたところです。
まずは、おおまかな形ができました。



古代メソポタミアのリラ(ライア)#4

新設計「シュメリアン・ライア Sumerian Lyre」の続きです。
本体のフレームとネックを組みました。ネックに予めペグホールを開けました。
そして響板材のはぎ合わせです。
材は、チェンバロの堀工房から貰い受けた道産材のエゾマツです。
迷っているのは響板にサウンドホールを開けるかどうかです。
ウルで発掘されたライアは、なにしろ紀元前2500年、ということは今から4500年前なので、響板材などの薄板はバクテリアが分解しちゃっていて形が残っていません。よってサウンドホールの存在すら判っていないようです。
こういった箱物共鳴箱はサウンドホールがあるのが一般的です。この穴の有無で音色
、鳴りが大きく違ってきます。

 

古代メソポタミアのリラ(ライア)#5

新設計「シュメリアン・ライア Sumerian Lyre」の続きです。

響板と裏板のはぎ合わせです。

そして、クランプ類を外して、裏表鉋をかけます。

響板と裏板(トップとボトム)を整形し、仮の糸を張って見て、楽器本体の底板にヒッチピンのマーキングと、弦の位置を考慮してブリッジの位置決めと力木(リブ)の配置を決定。

響板にリブを接着

そして一方で、ペグにする材料の木取りです。今回は樫材を使います。余分に挽いて、良いところだけ選別します。


響板の表板、裏板を貼ってモールディングを回したところです。

 

古代メソポタミアのリラ(ライア)#6

新設計「シュメリアン・ライア Sumerian Lyre」の続きです。
塗装が済んだばかりで、まだ早いのですが待ちきれずに弦を張りました。弦は、釣り糸の大物釣り専用 「シーガー プレミアム万鮪」というのを、ゲージが0.60mmから1.36mmまでの各ピッチに割り当てるため9種類買いました。
大物釣り専用のフロロカーボン製なので、切れることはまずないでしょうし、何しろ30m巻きなので、気兼ねなく試せます。
リュートやバロックギターの弦に、この釣り糸を流用することも多いようです。
もちろん、ガット弦を張りたいのですが、釣り糸のように各ゲージを30m単位で買って、いろんなテンションを試し張りする事はできませんし、ガット弦はお金がかかりすぎます。
一枚目の画像が今回の新作のシュメリアン・ライアで、仕上げはアンティーク塗装にしました。

 

古代メソポタミアのリラ(ライア)#9

自作のSumerian Lyreに、飾り紐とタッセルを付けました。
紐をこのように巻くのは初めてのことで、二時間ほどかかってしまいました。
疲れた〜〜〜〜
ちなみに後ろの自作ベントサイド・スピネットは17世紀後期イギリスのヒッチコックモデルです。
そしてこのライアは紀元前2500年のイラクのウルでの発掘モデルです。
300年ほど前と、4500年前の楽器です。

こういう楽器も古楽器というのだろうか・・・


タッセルってラテン語なんですね〜〜〜〜。Tassauが語源らしいです。歴史は相当に古くて、やはり古代アッシリアの頃から使われていたようです。Wikiによると、エジプトやメソポタミア、アラブ世界においては、タッセルは子供たちを悪霊や悪魔から守るためにフードや帽子に上に取り付けて着用されるものであった・・・ですから、楽器にも使われていた可能性もありそうです。確かに、古代ギリシャの描かれた楽器(ハープや管楽器類)には、タッセルがついてますね。

古代メソポタミアのリラ(ライア)#11

古代の撥弦楽器の多くが、この絵のようにプレクトラム、あるいはスティックで奏でるようです。
そこで、自作のSumerian Lyre用に、プレクトラムを作りました。
材料は黒檀。そしてタッセルを付け赤い紐を巻きました。



セイレーンのリラ(ライア)

こんな絵を見つけました。
Edward John Poynter(1836〜1919)の「The Siren (1864)」です。
セイレーンとは、ギリシア神話に登場する海の怪物です。上半身が人間の女性で、下半身は鳥の姿とされるが後世には魚の姿をしているとされたそうです。
でもポインターの絵は、美女として描かれています。彼の絵は肉感的な裸婦が多いです。
セイレーンの歌声を聴くと命を奪われるそうです。

さて彼女が弾いている楽器は、リラ(ライア)ですが、構造が、うちの工房自作のシュメリアン・ライアと酷似しています。
弦は13絃で、楽器の機能も十分と思われまます。
エンドピン、テールピースに相当する金属のリング、ブリッジ、そしてペグと実に克明に描写されています。
ブリッジの上に並行してもう一段、ラインが見えますがひょっとしてBray(ブレイ;ビビりの効果を出すため)の金属バーかもしれません。
そしてこの「The Siren (1864)」の絵を元に、制作可能な範囲でリラ(ライア)の図面を描いて見ました。Poynter自身は、当時流行った古代ギリシャ、ローマの懐古趣味に依って描いたと思います。
楽器の作りは、何しろ軽く、響板もリュート並みに2.5mm程度とし、弱い弦のテンションでも楽に鳴るような仕上がりにしたいと思ってます。
図面は2タイプです。
古代ギリシャ風と、モダンタイプです。
古代ギリシャ風の方は、表板、裏板をゆるいラウンドにします。

古代ギリシャ風というか、メソポタミア風というか、ボーダー柄は決めてはいないのですが、手描きでかける範囲の柄を選ぶつもりです。


古代の楽器に使われていた弦について

さて、古代の楽器に使われていた弦についてなのですが・・・・
どうも系統立てて記述している本や文献はみつかりませんでした。
ちょっと長くなりますけど・・・・・

楽器用ガット弦の製造が本格的に始まったのは、14世紀ごろのカタルーニャとのことです。
ある一族が弦の製造を事業として起こして良質の弦が入手できるようになり、このあたりからvielle(いわゆる中世フィドル)やリュート(中世リュート)、ギター(中世ギター)などが急速に広まったと言われています。
ですから、古代メソポタミアからみたら、ごく最近のことですね。

しかし、それ以前にも、古代ギリシャ以降、楽器用ガット弦の痕跡が各時代に僅かながらも認められるそうです。

プレーンガット弦を撥弦楽器に張った場合、直径が2mmを超えたあたりから、楽器らしい音では鳴らなくなります。倍音成分がほとんど発生しなくて、ただ「ブ〜〜ン」と鳴るだけです。細くて精度の高いガット弦が楽器には必要になります。
チェンバロの場合も、単弦で1.5mmあたりからチェンバロらしい音は出なく鳴ります。

古代中国では絹の捻糸が弦楽器に使われていましたが、古代メソポタミアの時代はまだ中国との交易が始まってはいませんでしたし、絹糸がヨーロッパで作られるようになるのはかなり後のことで、紀元前1世紀あたりです。

一方、可能性としては・・
麻の栽培(後には綿花の栽培も)が始まったのは、紀元前1万年とのことなので、メソポタミアの時代には、もう繊維業(または国策事業として)として成り立っていたのではないかと思います。
麻紐、麻ロープは、土木事業から海運、運輸、あらゆる日常生活に使われていたはずです。
それがさらに「蝋引き麻ひも」を考案し、楽器に使われていたのではではないかと想像しています。パラフィン(蝋)は結構質量があるので、巻き弦と同じ理由で、同じゲージでも裸の麻紐より質量を増やせるし、紐が強くなります。

このあたりに詳しい方がいらしたら、教えて頂きたいと存じます。
古代メソポタミアのシュメール・ライア 

今回のキターラ、プサルテリウム製作にもう一つ加えます。
昨年、修理や新規製作したシュメール・ライアの小型ヴァージョンです。

CG作りました。この通りの仕上がりにはならないかもしれません。なにしろ紀元前3000年くらい前の楽器で、殆ど判っていません。あとは自由な発想で・・・・

Sumerian Lyreの仮組をしてみました。これでいけそうです。

 

Sumerian Lyre#12

象牙もどきのビーズが届いたので、Sumerian Lyreのペグの頭に付けてみました。真鍮釘を通し、ちょこっとエポキシを付けて打ち込みました。
これでちょっとリッチな感じに・・・

 


セイレーンの竪琴

昨年末に製作したSumerian Lyreは、デザインのヒントを得たのが、Edward John Poynter(1836〜1919)が描いた「The Siren (1864)」です。
セイレーンとは、ギリシア神話に登場する海の怪物です。上半身が人間の女性で、下半身は鳥の姿とされるが後世には魚の姿をしているとされたそうです。

そこで、この楽器を「Sumerian Lyre」ではなく「セイレーンの竪琴」としようかなとも考えています。

年末の一連のPsartelium、Greek KitharaそしてこのSumerian Lyreも、工房の商品アイテムにと検討中です。

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